思い立ってDVDを全巻購入。全520分の長さよりも、14話、15話の95分、100分という構成に正直、ダレる。全く集中できなくなる、というほどではないが、矢張り、長いのだ。だんだん疲れてくる。しかし、そのアンバランスさと、10年前の作品、という時間がジャイアント・ロボを思い出させる。が、それはまた別の話。
この『KEY THE METAL IDOL』という作品は、いったい何なんだろう?
まずは、画面から漂ってくる20世紀臭さ。いくつかの細かい設定は僕に強く20世紀を思い浮かばせる(PCがあるのに、インターネットは特に出てこない)し、そもそものアイドルを目指す少女という図式からして20世紀的だ。さらに、現実世界に既に存在している二足歩行ロボット、閉塞感のない日本社会、戦中(WW IIだ)、戦後というキーワード。けれど、古くさい訳じゃない。20世紀的だな、と、只そのように感じるだけだ。
そして、ライナーにある『悲しき流体』に代表される、異様なまでにネガティブな雰囲気。閉塞感。孤独感。虚無感。苦しみ、もがき、飢え、虐げられ、死にすら至る。第1話で3人も人が死ぬ。けれども、あまり異常に感じない。全体に漂う雰囲気が、死ですら容認してしまう。そもそも、主人公からして現実から乖離している存在だ。ここは、本当に酷い世界なのだ。その中で唯一の救い、厨川さくらさんも、けれど主人公キィにとっての救いであって、さくらさん自身からみれば、世界はネガティブな存在でしかない。
この、暗く、重く、歪んだ世界は、間違いなく佐藤博暉監督の世界だ。『悲しき流体』の著者。『KEY THE METAL IDOL』の原作者。どちらも、最後の最後まで世界を否定しながら(或いは世界に否定されながら)、けれど、なお世界に手を伸ばす事を止めない。それは前向きな行為で表されていないけれど、かなり歪んでいるけれど、でも、そこに共感と憧憬を感じる。
そして、そういった種類のネガティブさ自体からも20世紀らしさを感じる。現在は、もっと現実の受け取りかたが淡泊で、希薄な気がする。真剣という言葉の意味が変わり、何かのために他の全てを犠牲にすることをいとわない様な、そんな、小さくて『痛くない』世界だ。KEY THE METAL IDOLからは、そうじゃなかった頃の、けれど矢張り歪んでいた世界を感じる。
そんなKEYの発売10周年を記念して、どうやらDVD-BOXを出す計画があるらしい(
12月発売予定……?)のだが、それに関連して
BBSで当時の話が出ているのが面白い。企画主導をしているらしき(BBSで受け答えをしている)白川詩子さんという人は(スタッフロール上では)プロデューサだった人なのだが、さすがにそういう立場だった人だけあって、かなり生々しい。
DVDを買ってしまった後なので、BOXが出たところで買うことも無いと思うが、個人的には『悲しき流体』だけでも残しておいて欲しいと思う。ただひたすらにネガティブな独白ではあるが、けれど作品の一部の様に思えるからだ。いや、エンタテイメントとしてはどうかとは思うが。