SEのフシギな生態
何もかも懐かしいほどのネタばかりで思わず苦笑する。本当にやってしまいやすい些細なミスが、具体的な例と共につらつらと書かれている。業界で3年も働けば、この手のミスは一通りやるんじゃないだろうか? そして、そんな些細なミスが仕事を何倍にも増やしてくれるのがこの業界の特徴だ。なぜなら、この業界では、作業工程の、最初から最後まで全てを完璧にこなすことが要求されているからだ。大げさに言っている訳じゃない。本当に、完璧に、こなされることを要求されているんだ。驚くことに。そして僕らは今日も思い知る。「それは期待通りに出来るのではなく、指示通りに出来るのだ」と。だから何度も確認する。これで良いのか。これで期待通りなのか。これで完璧だろうか。
中にはそこを勘違いしてしまう人もいるが、この業界、本質はコミュニケーション能力であり、技術力なんてのはその後のものだ。世界で10番以内に入る、なんてレベルの技術者なら話は別だが、普通、業界で出来る人と言われるのは、コミュニケーション能力が高く、そして物事を系統立てて分解、再構築できる人だ。そして、さらに技術力もある。ただ、それは最新のものではない事も多いが……。
この本の良いところは、仕事の最初から最後までを、一通り網羅していることだ。そのシーンにおいて、どんなミスが発生しやすいのか、ということが、頭から終わりまでについて一通りそろっていることが良い。経験者にとっては懐かしいものだが、未経験者にとっては良い指針になると思う。分量もそんなに多くはないので、これから業界で働く人、まだ日が浅い人にお勧めの本だ。読まずとも、長じれば嫌でも経験することになるとは思うが。