ゆとりの法則

日経BP書店 書籍紹介-ゆとりの法則(ISBN 4822281116)
2004/04/15 記
 最初に、ゆとりとはなにか、という定義がある。ここで言うゆとりとは仕事におけるゆとりのことだ。だから、ゆとりとは効率の逆である、と定義されている。ゆとりと効率は相反する要素で、且つ、不可分である、と。そして、次は効率を定義する。効率とは、特化することである。そして、なにかに特化すればするほど効率は上がり、ゆとりは下がっていく。

 やがて内容は、では、特化すること、ゆとりがあること、とはどういう事か? という内容にうつっていく。特化する、ということは、それ以外のことを排除する、ということだ。逆に言うと、100%特化したものは、それ以外の事が全く出来ない、ということになる。ゆとりはその逆だ。”それ以外”の事をやるのに、絶対に必要なものだ。つまり、ゆとりとは、変化するために必ず必要なものである、ということになる。

 もし、変化する必要がないのであれば、ひたすら特化すればいい。それ以外の余地、選択肢を持つ必要はない。けれども、もし変化が必要になったとき、特化した組織は(そう、これは組織の、そして管理の話だ)変われない。変わるためのゆとりを持っていないからだ。そうなると、効率を落とすか、ダメになるか、しか選択肢はない。変化するためには、ゆとりが必要なのだ。

 中盤は、組織について。組織の中のゆとりについて。組織の中での、ゆとりの使いどころについて。仕事を複数人数で行う以上、全員の効率を100%には出来ない。そこには、クリティカルパスが存在するし、そうなれば必ず待ち時間が発生する事になるからだ。それでも全員の効率が100%に見える場合、そこには恐怖が存在する。100%効率でなければならない、という恐怖が。

 最期に近づくと、リスクをとるためにゆとりが必要だ、と解説される。リスクをとる事は、利益をとることで、リスクの少ないところは、当然利益も少ない。そして、リスクを扱うには、柔軟な対応、つまり変化が必要で、それはゆとりが無ければ出来ないのだ、と受け取れる内容になっている。


 内容の一部がピープルウェアとかぶってはいるが、この本もまた、新しい発見をもたらしてくれた。いくつかの事例(当然、悪い事例だ)は経験とも重なっており、真実味が感じられる。そして、やはりこの本も、仕事に誇りが持てることのすばらしさを説いている。いつかは、そんな職場で、気持ちよく働きたいもんだ。
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