CASSHERN
色々な人から、さんざん"話は無いと思ってみたほうが良い"と聞かされていたので、心底、頭を空っぽにして鑑賞。
冒頭から、ため息が出るほどに詩的な絵作り、構図、そして格好良く見せるためだけに作られたシチュエーションにほれぼれする。赤錆びた町並み、黄昏の世界。温室の中だけの緑の、舞い散る白い花びらの中、寄り添い合う家族達の姿。赤のプール、青のプール。白黒の戦場。棺に入れられ運ばれる自分の死体、を眺める哲也。息子の死体をプールに沈める父親。月光を見上げ、旗を纏うブライキング。生きてください、という母親。雪山の更に頭上に漂う、灰色の分厚い雲に、その慟哭を、魂が震えるほどに叫び吐くブライキング。そして、その心中を仲間達に、世界に向けて力強く、高らかに宣言するブライキング。
母親の絵を挟むように座る父親と娘。恐ろしいほどの数で迫り来るアンドロ軍団。そのアンドロ軍団を恐ろしいほどの勢いで倒していくキャシャーン。政府高官をたたき切り、クーデターを起こす将軍の息子。飛び散る血しぶき。その様が愉快でしょうがない男。
そして、次第に人々はいなくなり、ブライキングも、その歩みを止める。「どうせすぐ生き返る」 死、が失われた世界。それはもう、殺し合うことすら"娯楽"の世界だ。終わりが無く、だからこそ始まりが求められない世界。生が失われた世界だ。だから、許し合うことが大切だと言われても、それはむなしく響く。許し合わなければならないほど濃密な関係は、そこには存在しないのだから。