流れよわが涙、と警官は言った
第1部~第2部の中盤あたりまでが妙に面白く、先を読みたいという欲求に強くかられた。かなり徹底された管理社会において、法律上、消え去ってしまった男。彼の前に現れては消えていく女達。彼女たちは口々に彼に何かを告げていく。それは、帰らない夫であったり、ウサギであったりするが、おおむね、終わってしまったものだ。ダメになってしまったものだ。或いは、ダメになろうとしているもの。それでも彼女たちはそれを誉め、自慢し、求めている。
後半に入り、本当の主人公、パックマンが前面に出てくると、物語はより陰鬱な雰囲気になっていく。どうしようもない袋小路だ。そして彼は涙を流す。僕には、もう、彼には泣くしかないから、泣いているのだ、と感じられた。悲しいから、嬉しいから、泣きたいから。そういった感情の入り込む隙間すらなく、ただ、泣くしかないのだ。或いは、そうでないかもしれない。巻末の解説からは、それはちがう、と読み取ることが出来る。けれども、僕はそう感じるだけの価値観を持ち合わせてはいないのだ。良きにせよ悪しきにせよ。だから、なのだろうか。後半は、前半ほど面白くはなかった。ただ、前に読んだ短編でも、その終わり方に物足りなさを感じたものが多かったので、そういう作家なのだ、と言えるのかもしれない。