Puer Heart

PURE HEART
Windows版
2001/06/26 記
2004/06/10 修正
◆世界観
 近未来。工業の発展により社会には人型汎用ロボットがあふれていた。
 おそらく、建設に、医療に、飲食店に、家庭に、ありとあらゆる場所に。
 労働力として……そして、パートナーとして。
 そんな中、特に家庭用として作られたAI-D同士の格闘大会、『AI-Dコンテスト』に情熱を傾ける者達もいた。

▼AI-D
 家庭用人型奉仕機器。その最大の特徴は人工知能にある。
 筐体中に取り付けられたあらゆるセンサーからのフィードバックを受け、完全な自立学習型、そして、各種の感覚……美観、独占欲、博愛等を持ち合わせている。
 全く、完全に、完璧に『心』を持つに至った『工業製品』である。

◆導入
 いつか、AI-Dのオーナーに。各地で行われるAI-Dコンテストに熱を上げながら、そう夢を持ち続けながら大きくなった僕もいつしか就職を控える歳となった。ただ、その気持ちは今でも変わらない。
 そんなとき、数年前から賭博の対象にもなっているAI-Dコンテストに立ち寄った僕は、思いがけず大穴を当ててしまう。車くらいは余裕で買えるほどの大金。それをどう使うか……僕の下した判断は、自分自身のAI-Dを持つこと。そして僕は訳ありのAI-D、「アルファ」を手に入れたのだった。

◆目的
 ゲームの目標はAI-Dコンテストに出場すること。そして勝つこと。…ではなく手に入れたAI-D「アルファ」と生活、すること。少なくともプレイしてみて僕はそう感じた。
 シナリオのほとんどはアルファとの生活が中心であり、さらに、AI-Dコンテストに出場するという事に対しての動機付けがとても弱い。そのため、だんだんAI-Dコンテストがどうでもよくなってくる。
 しかし、プレイヤーは「アルファ」をどのようにトレーニングさせるのかを決定しなければならない。

▼トレーニング
 トレーニングにも大別して2種類あり、アルバイト、そして純粋なトレーニングがある。
 アルバイトは資金を稼ぎつつアルファの能力値を上げ、トレーニングは資金を消費してアルファの能力値を上げる。トレーニングの方が効率が良いと思われるのだが特に意識するほどの利点も感じない。
 それぞれに「大成功」「成功」「(普通)」「失敗」「大失敗」があり、アルファの苦手なモノを続けて行わせると失敗率が上がるような気もするが、単純にランダムで選択されているようにも思える。
 また、トレーニング全体に言える事だが、一体、何がどれだけ上昇、または下降したのかが画面から全く解らない。

◆目的に対する障害
 月に一回あるコンテストが障害……であろうか。しかし、まじめにやっていれば負けるようなこともなく『ギリギリ感』は無い。
 そもそもこの時点ですでに「アルファ」との生活が目的であると思っているので、完全に作業化している。
 ただし、前記のように難易度が低いのでさほど苦痛ではない。
 また、コンテストのシュミレーションを行う場所があり、ここで勝てる=コンテストで勝てる、であるのでコンテストで勝てるかどうかが事前に解り難易度低下に貢献している。

◆資源
 まず、「アルファ」そして「パーツ」
 パーツはアルファを強化するもので、アルバイトの対価として得られるポイントによって購入することができる。また、強力なパーツは高く、貧弱なパーツは安い。
 終盤では結局一番高いパーツを買いそろえる以外に強化する方法は無いので「最強装備」を買う、というあまりおもしろくない事になる。
 そしてアルファ。基本的に適度な調整を行いながらトレーニングを行って行けば各能力値はまんべんなくあがっていく。さほど苦労することもなく終盤には全パラメータが最高値になると思う。

◆情報
 アルファにはSTR DEX INT STAM SP AR HPという7種類のパラメータがある。それぞれが高い方がコンテストでは有利になる。
 プレイ中、こまめにチェックすることになるだろうが、このパラメータ、ここまで成長させよう、というより、これが低いから強化しよう、というアプローチ以外は無意味になっていく。バランスよく成長させないとコンテストで勝てないのだ。そのため、どれが低いか、をチェックする以外の情報としては役に立たない。

◆テーマ
 前記の通り、育成部分はほとんど意味をなさず、シナリオのみが全面に押し出されている。
 つまり、シナリオで語られるテーマのみが重要であるわけだが……
 PuerHeartで感じたことは、一言で言えば「従属存在」であろうか。
 ゲーム開始直後、最初のイベントではアルファに表情がでてくるまで、が語られている。
 AI-D最大の特徴はその豊かな表情、人工知能であるとは主人公の弁だが、当初アルファにはその『表情』がない。そこで、主人公はアルファに表情を持ってほしいために花見に行ったり等、いろいろと試してみる。結果として、アルファとセックスをするとアルファに表情がでてくるのだが、その落差が激しい。というかあまりにあっけない。女性器にスイッチでも仕込まれていたんじゃないかと思うくらいの落差である。
 そして、延々、アルファとの作業のような生活が続いた後、ラストイベントで純粋に人に奉仕するために作られた存在であるAI-Dは、人にとって心地良いパートナーであると同時に人を堕落させる存在である、という内容が語られる。結果、エンディングで主人公はAI-Dを、『アルファ』をパートナーとして認め、愛し、生活をともにしていくというエンディングを迎える。
 でも、僕には違うものに感じられた。主人公とアルファは対等ではない。アルファはあくまで主人公に従属するモノであり、それはパートナーとは言わない。
 だからいつか破綻してしまうんじゃないかとよけいな事を考えてしまうのである。

 そして、その影で不幸にしか慣れないオメガの存在。これには、僕がヒロインよりもサブヒロイン、アンチヒロインに強烈に感情移入しやすいというのを差し引いても『ご都合主義め!』と言わずにはいられない。世界の悪意を一手に引き受けているオメガがあまりにも安易で哀れだ。

◆総評
 よくできているわけでもなく、何かが突出しているわけでもなく。難しくもなく、つまらなくもない。
 プログラマという職業上、優れたシステムやインタフェースに感動したり悔しかったりするのだが、それもない。つまり、PuerHeartは心震えるような経験ではなかった。
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